排水口のすみにいる

まさしく思考回路の掃き溜め

バチェロレッテ私的感想〜既存の枠組を軽々と飛び越えていく令和的女性像の確立

※最終回まで見た感想です

※ネタバレ注意

 

バチェロレッテ、アフターローズまで拝見。

いやーーー素晴らしかった。

あのEDを上手く昇華させた萌子さん、男性陣、制作スタッフ、また付いて行った視聴者も素晴らしい。

バチェロレッテも、男性陣も、あの方々でよかった。

本当にお疲れ様でした。

1日明け、ある程度腹落ちさせられたのでつらつらと感想を。

番組全体の構造への考察が中心です。

ほんとは「あのコウコウさんが…」とかやりたいけど恋愛noobだからね!(咽び泣き)

 

1,旧来の枠組をぶっ壊した爽快感

 

バチェロレッテという枠組の中で、1人の人を選べなかったあのエンディングが好意的に受け入れられたのは、視聴者側のジェンダー観・人権意識の変化があるように思います。

 

①誹謗中傷事件の多発による視聴者側のリテラシー向上、②恋愛リアリティーショーへの不信感、③自立した女性像への憧れ、④個性尊重の社会的な流れ

別にエビデンスも統計もないですが、肌感覚で大きく分けると以上の4点でしょうか。

 

昨今、誹謗中傷による自殺やテラスハウスの休止など、恋愛リアリティーショーに対する不信感が社会的に大きくなっています。

炎上し誹謗中傷が相次いだバチェラー3でも文春砲で「ある程度の演出がある」旨を報道されました。

 

大前提ですが、恋愛リアリティーショー全般で押し出される「恋愛」は歪で不自然なものです。

本来プライベートである筈の自身の恋愛模様を、バラエティーとして消化させなければならないのですから出演者にとっては大きな負担となります。見せられる部分も一面的ですしね。

 

わたし自身、バチェラー・バチェロレッテを楽しんでいる時、「他人をコンテンツとして消費しても良いものか」と微妙な罪悪感を抱えながら視聴していました。そもそも他人の恋愛を覗き見すること自体、お行儀が悪いことなんですよね。見ちゃうんですけど……

 

その中で出てきたのが、萌子さんでした。

ぶっちゃけ、個人尊重・フェミニズムと、恋愛リアリティーショー番組の思想には合わない方です。

自分自身を作り上げなきゃいけないはずの番組で、萌子さんは嘘をつかずに向き合っていました。

この姿勢は本来の恋愛のあり方で、至極自然なことなんですよね。

 

古いジェンダー観を持つ恋愛リアリティーショーの中で、既存の枠組を飛び越え、自身や男性と向き合い、我が道を行く姿が本当に爽快。

エンディングも、個人的には納得感のあるものでした。

バチェロレッテ自身がバチェロレッテという番組ののアンチテーゼになっている構造が、非常に令和的でよかったです。

 

Twitterで「結婚するなら自分らしさを曲げなきゃいけないこともある」というようなツイートを見かけました。確かに一理あります。しかし、相手を尊重すること、結婚すること、自分らしくあることって両立できるはずなのです。

 

でもこれ、続編どうするんだろう。ノーローズが主流になってしまうと、バチェラー・バチェロレッテという番組は成り立たなくなってしまいますよね。

 

……まあそれはそれでいいのか。

わたし個人としては、出演者皆が幸せになることが一番のDDオタなので、そこらへんも時代に合わせて変化していけばいいなと。アマゾンさん頑張って。

 

2,出演者としての責任を全うした男性陣/自分の人生に対して誠実であろうとしたバチェロレッテ

 

アフターローズセレモニーも大変良かったです。

マラカイさんや藤井くん、サーファーさんがちょい叩かれてるけど、個人的には的を射た発言をしていたと思います。

 

「恋愛であっても出演者としてのルール・規範を守る必要があるのでは」「バチェロレッテの責務は選ぶことだ」という考えは、ルールを守った出演者から当然出てくるように思います。

曲がりなりにもバチェロレッテという枠組を使った萌子さんには答える義務がある。

 

視聴者的にも疑問を持つ部分でもありましたから、だから叩かないで……わたしファーストインプレッションのサーファー好きなんすよ……(私情)

 

私情はおいといて。ボーイズは皆、ボーイズなりにこの物語をうまく昇華させようとアフターローズやその後のインスタで動いていたのが素敵でした。

番組を成立させなきゃいけないという義務感を持っているボーイズ達がいたからこそ、萌子さんが萌子さんたりえたし、あのエンディングができたのではないでしょうか。

 

ボーイズ達の質問に対して、「枠組みがどうあっても、自分自身・ボーイズの人生に対して誠実であるべきだ」と返した萌子さんは、やはり途方もなく萌子さん。

彼女は、バチェロレッテという番組ではなく、自分自身や男性たちに真剣に向き合っていました。

誰も傷つけたくないという思いが人一倍強いせいか、誰も選ばないという選択をして、その重みを背負った萌子さんの覚悟と不器用さが出ているように思います。

男性陣と萌子さんの対比、そこから男性陣が萌子さんに共感・理解する図が美しい。

 

3,萌子さんもボーイズもみんな幸せになってほしい(語彙力)

 

萌子さん自身の覚悟が現れたアフターローズでしたが、萌子さんはずっと萌子さんのままでした。

変化してないからいけない、と言うつもりは毛頭ありません。

彼女は彼女なりの理想や哲学があります。

 

誰も傷つけたくない、自分自身で選ぶ、すべて責任を取るという意識は、彼女の凄まじい忍耐と芯の強さ、プライドから来ているのでしょう。

ローズセレモニーの時の酷くやつれた顔も、自分自身の責任で選択することの代償のように見えました。

すべてを背負い込む覚悟でいるんだろうと思うんですが、その荷物を少しでも預けられたらいいのに……結婚という形でなくても、預けられるような人が萌子さんにいてくれれば良いのに……と感じました。

傷つける可能性はあっても、人の懐に飛び込む覚悟というのも、大事なんじゃないの?という気はしないでもない。

……と、ここまでつらつらかきましたが、こんなことはきっと萌子さんは百も承知でしょう。

最高のバチェロレッテでした。

 

ボーイズも最高。

みんな最高でした(語彙力)。

萌子さんの良さを引き出していたし、萌子さんに良さを引き出されてもいました。

 

恥ずかしながら、「バチェロレッテという枠組の中で、このエンディングをどう消化すればいいんだ」と悩みましたが、何回か見直してようやく腹落ちしました。

これは、1人の女性の恋愛ドキュメンタリーであり、男性の成長譚で、バチェロレッテによる恋リアのアンチテーゼでした。

素晴らしい作品をありがとうございました。